第923回:「負担の公平化」について考える(その4)

地方政治新聞「民主香川」に、「社会保障はどうなるか」というタイトルで、社会保障改悪の内容の連載をしています。2017年8月13日号に掲載した、「負担の公平化」について考える(その2)の後半部分です。10月6日付の第920回の続きです。

(承前)

介護保険の利用料については、15年8月から「一定以上の所得がある人」(65歳以上の第1号被保険者のみ。第2号被保険者は対象外)が利用する際、自己負担割合を1割から2割に引き上げられることになりました。

「一定以上の所得」とは、高額所得者という意味ではなく、65歳以上の第1号被保険者の上位2割にあたる「相対的に負担能力の高い人」が対象になります。つまり、「一定以上」とは所得額の話ではなく、「全体の上位20%の人」を意味するのです。

具体的には、本人の年間合計所得金額が160万円以上の人が対象となります。ただし、以下の場合は1割のままです。

・単身の場合、本人の年金収入+その他の合計所得金額が280万円未満の人

・本人の世帯内で他に第1号被保険者がいる場合、その人の年金収入+その他の合計所得金額まで合わせた総額が346万円未満の人

この対象者は約45万人とされますが、そのうちの「一定所得者」12万人がさらに3割負担に引き上げられます。

17年5月26日に成立した「地域包括ケアシステム強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」は、介護保険法だけでなく医療法、社会福祉法、障害者総合支援法、児童福祉法など31の法律をまとめて改正する法案でした。しかし、衆議院の審議は22時間、参議院の審議は16時間と短時間の審議で採決を強行し、国民の大きな批判をあびたところです。15年8月に2割負担に引き上げられたため負担に耐えられず、特別養護老人ホームを退所したり、サービス利用を控えたりする事態が生まれています。

2割負担の影響調査を実施することなく、連続する引き上げを強行したことについて、強く抗議をしたいと思います。

法案を提出した時の厚労省の資料では、合計所得金額(給与収入や事業収入等から給与所得控除や必要経費を控除した額) 220万円以上を想定。年金収入プラスその他所得ベースにすると340万円以上に相当(年金収入だけの場合は344万円)とあり、具体的な基準は政令で示すことになっています。