第867回:小規模事業者にマイナンバーの管理を強要する総務省通達には問題があります

事業者は、年末調整の際に従業員から提出された扶養控除等申告書をもとに、給与支払報告書を従業員が住む各市区町村に提出します。この報告をもとに市区町村は住民税を算出し、事業者に住民税額を記した「決定通知書」を送付し、これをもとに事業者は住民税を給与から天引きします。

総務省は、今年5月に自治体から事業者に送付される「決定通知書」に、マイナンバー記載欄を追加する省令を発出しました。

現在の法律では、従業員は事業者に対してマイナンバーを提出する義務はありません(あくまで任意であり、拒否することは可能です)。従って、事業者は従業員のマイナンバーを管理する義務はありません。

ところが、総務省通達の通りに自治体が事務を行えば、事業者に対し、従業員のマイナンバーを管理することを強要することになります。

小規模事業者の中には、漏えいしないように厳格に管理するための設備も人員もないところがあります。マイナンバーを記載した通知書が強制的に送付されたなら、マイナンバーの管理が困難な小規模事業所に管理を強要することになります。

また、この通知書が、多くの自治体で「普通郵便」で送付されます。普通郵便は不達、誤配などがしばしば問題が報告されています(だから、書留郵便がある)。最近、県内で3万通近くの郵便物を配達せず自宅に隠し持っていた事件が発覚しました。

香川県保険医協会の調査では、県内17自治体中11自治体(65%)が、「決定通知書」にマイナンバーを「記載する」「記載する予定」と回答しました。1自治体が「記載しない」、他は検討中でした。

「記載する」「記載する予定」と回答した自治体のうち、「普通郵便(予定含む)」が8自治体、「簡易書留」が2自治体、「検討中」が1でした。「簡易書留」「検討中」と答えた自治体は「誤配、紛失防止」「マイナンバーが記載されているから」でした。そもそもマイナンバーを記載しなければ、こんな心配もないわけで、小規模事業所にマイナンバーの管理を強要する今回の通達は速やかに撤回すべきです。