第865回:医療費からみた社会保障(その1)

地方政治新聞「民主香川」に、「社会保障はどうなるか」というタイトルで、社会保障改悪の内容の連載をしています。2016年11月20日号(第1725号)に掲載した「社会保障はどうなるか(11) 医療費からみる社会保障(1)」です。

厚生労働省は9月13日に、2015年度の概算医療費は41.5兆円、前年度から1.51兆円、3.8%増加したと発表しました。概算医療費というのは、労災医療や自費医療等の費用を含まないことから「概算」と呼称しているものです。医療機関などを受診し、傷病の治療に要した費用全体の推計値である国民医療費の約98%に相当しています。

医療費の中に占める高齢者の医療費の割合が高いため、高齢化のために医療費が増えると説明されていましたが、高齢化以上に薬剤費が医療費を押し上げていることが今年のデータで明らかになりました。概算医療費に関する厚労省のまとめは、以下の通りです。

・医療費の内訳を診療種類別にみると、入院16.4 兆円(構成割合39.5%)、入院外14.2 兆円(34.3%)、歯科2.8 兆円(6.8%)、調剤7.9 兆円(19.0%)

・医療費の伸び率は3.8%。診療種別にみると、入院1.9%、入院外3.3%、歯科1.4%、調剤9.4%

・1日当たり医療費の伸び率は3.6%。診療種別にみると、入院2.0%、入院外3.2%、歯科1.2%、調剤7.3%

医療費全体の伸び率が3.8%に対し、調剤の伸び率は9.4%です。1日当たり医療費の伸び率が3.6%に対し、調剤の伸び率は7.3%ですから、医療費が増えた主因が「薬剤費」であることは明らかです。

同じ日に公表された「調剤医療費(電算処理分)の動向」によれば、処方箋1枚当たりの調剤医療費の対前年度比の伸びは、全体が7.3%増に対し、75歳以上では6.5%で平均より低く、55歳以上65歳未満が9.5%ともっとも高いことが示されました。

薬効分類別でみると全体の伸び率は11.9%で、高血圧や心臓病に使用する循環器用薬は1.7%の増ですが、高齢者に多く使用される血圧降下剤は1.9%の減です。

(次号に続く)

地方政治新聞「民主香川」に、「社会保障はどうなるか」というタイトルで、社会保障改悪の内容の連載をしています。2016年11月20日号(第1725号)に掲載した「社会保障はどうなるか(11) 医療費からみる社会保障(1)」です。

同じ日に公表された「調剤医療費(電算処理分)の動向」によれば、処方箋1枚当たりの調剤医療費の対前年度比の伸びは、全体が7.3%増に対し、75歳以上では6.5%で平均より低く、55歳以上65歳未満が9.5%ともっとも高いことが示されました。

薬効分類別でみると全体の伸び率は11.9%で、高血圧や心臓病に使用する循環器用薬は1.7%の増ですが、高齢者に多く使用される血圧降下剤は1.9%の減です。

一方、伸びが目立つのは、最近高価薬の発売が目立つ糖尿病薬の11.2%、腫瘍薬(主に抗がん剤)の19.7%です。とりわけ、化学療法剤は160%の増(2.6倍)で、内訳は合成抗菌剤(いわゆる抗生物質)は3.8%の減に対し、抗ウイルス剤は249.1%増(3.5倍)でした。

地方政治新聞「民主香川」に、「社会保障はどうなるか」というタイトルで、社会保障改悪の内容の連載をしています。2016年11月20日号(第1725号)に掲載した「社会保障はどうなるか(11) 医療費からみる社会保障(1)」です。

地方政治新聞「民主香川」に、「社会保障はどうなるか」というタイトルで、社会保障改悪の内容の連載をしています。2016年11月20日号(第1725号)に掲載した「社会保障はどうなるか(11) 医療費からみる社会保障(1)」です。

この数値にどこまで影響しているかは不明ですが、抗がん剤では、一般名ニボルマブが問題になっています。この薬剤は、「根治切除不能な悪性黒色腫(3週に1回)」に投与するもので、対象患者は470人として申請があり、2014年9月に100mg/10mlで約73万円の薬価が設定されました。2015年12月に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(2週に1回)」に適応が追加され、対象患者は数万に増えましたが、薬価は2年に1回の改定という原則があるため据え置きとなり、問題になりました。対象患者が100倍になった訳で、そのすべてに使用される訳ではありませんが、当然薬価の見直しがあってしかるべきだと思いますが、そうはなっていません。

この薬剤は、海外でも販売されており、諸外国と比較しても異常に高いという問題もあります。保団連(全国保険医団体連合会)が9月6日に記者会見で明らかにしたところでは、英国が約15万円(日本の6分の1)、米国が約30万円(日本の2.5分の1)です。さらに、米国では20%の値引きもあるといわれており、実質的には日本の3分の1の価格ということになります。

その後、「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」にも適応が広がり、さらに使用量が増えています。厚労省は中医協(中央社会保険医療協議会)で25%引き下げという提案を行っていますが、50%以上の引き下げが必要なのではないでしょうか。異常な高薬価を放置すれば、保険財政を圧迫し国民皆保険制度の根幹を揺るがせかねない問題になります。

※その後、50%に引き下げになりました。