第857回:「肩車型社会」を考える

香川県保険医協会報の2017年1月号に投稿した、「肩車型社会」を考える、と題した投稿を再録します。

1月5日に、「日本老年学会・日本老年医学会高齢者に関する定義検討ワーキンググループ」が、高齢者は 10 ~20 年前と比較して加齢に伴う身体的機能変化の出現が 5~10 年遅延しているとし、「高齢者」の定義を75歳から89歳までとする、としました。

これまで厚生労働省は、20歳から64歳までの人口が、19歳以下と65歳以上の人口を支えており、2050年には65歳以上1人に対し20歳から64歳が1.2人で「肩車型」になるので、支えきれなくなると、言ってきました。

高齢者が増えて大変だ、だから社会保障費を削減しなければという根拠にしてきました。

しかし、現実はどうでしょうか。昨年6月3日に「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」が中間とりまとめを公表しました。この時の資料をみると医師の就業率は、男女ともほぼ同じで、66歳で75%前後、76歳で40%前後、86歳でも(!)20%前後です。86歳にもなればフルタイムで働いているわけではないでしょうが、65歳を過ぎれば「肩車に乗っている」わけではないことは明らかです。

介護の現場でも同様です。65歳を超えて仕事をしている方は珍しくありません。後期高齢者で、介護施設で夜勤をしている方が病気になりました。年金暮らしでありながら年金額が少ないため介護の仕事をしているため、収入が増え、医療費の自己負担が3割になったのです。「何のために仕事をしているのか」と嘆いています。

すでに、65歳以上人口が現役世代に支えられている、というのは机上の空論です。高齢者の定義がどうなろうと、老いても、障害があっても、認知症であっても、住み慣れたまちで暮らし続けることのできる社会づくりが求められているのでないでしょうか。