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Monthly Archives: 5月 2017

地方政治新聞「民主香川」に、「社会保障はどうなるか」というタイトルで、社会保障改悪の内容の連載をしています。2017年3月19日号(第1737号)に掲載した、「経済・財政再生計画」にみる患者利用者負担増(1)、の後半を再掲します。第887回(5月23日付)の続きです。

(承前)

そもそも、なぜこういった政策が行われるのかについて、歴史的に振り返り考えていきたいと思います。

2015年6月30日に、経済財政諮問会議が答申した「経済財政運営と改革の基本方針2015 ~経済再生なくして財政健全化なし~」(骨太方針2015)を、閣議決定しました。

骨太方針2015は、2020年度のプライマリーバランス(注1)を黒字化することを目標にしています。その中で、当初3年間(2016~18年度)を「集中改革期間」と位置づけ、集中的に取り組む。専門調査会を設置、速やかに改革工程等を具体化し、改革の進捗管理、点検、評価を行う、としました。

その具体的な中味として定められた「経済・財政再生計画」(注2)は、社会保障分野について44の「改革項目」を掲げて、そのうち医療・介護分野は38項目にのぼります。それを実施する具体的な計画が、15年12月24日の経済財政諮問会議で決定された「経済・財政アクション・プログラム」と「経済・財政再生計画 改革工程表」です。

この「改革工程表」を予算に反映させるために、財務省から、15年11月24日に財務省・財政制度等審議会が「平成28年度予算の編成等に関する建議」が出されています。

これを元にして、2016年は、以下の項目が議論されました。

  • 「かかりつけ医」を普及することを名目にした、受診時定額負担の導入
  • 市販薬類似薬の保険外し(スイッチOTC化している医療用医薬品の患者負担率の引き上げ)(注3)
  • 入院時の居住費負担の拡大(*)
  • 70歳以上の患者負担額上限の引き上げ(*)
  • 75歳以上の患者負担を原則2割にする

このうち、2017年予算編成では、(*)印の2点が反映され具体化されました。他の項目は2018年以降の実現をめざし、引き続き議論が行われるもので、決して中止になったのではありません。

注1:PB(プライマリーバランス):基礎的財政収支といい、国の歳入から国債収入を除いたものと、国の歳出から国債の利払いと国債償還費を除いたものの差額をいう。借金と利子等を除いた通常の活動での収支にあたる。

注2:最新のものは、2017年12月21日に策定された「経済・財政再生アクション・プログラム2016」で、内閣府のHPに掲載されています。

注3:OTCとは、Over The Counterの略でカウンター越しに客に薬剤の販売を行う、ドラッグストア等で取り扱われる医薬品のことで、法律的には「一般用医薬品」と呼ばれます。スイッチOTCとは、医療機関で処方される薬品と同一成分で、ドラッグストアでも販売されるものをさします。

5月23日、自民・公明与党は日本維新の会とともに、衆院本会議での、共謀罪法案の採決を強行しました。私は、日本医療福祉生協連の代表理事会長理事として、下記のような抗議声明を発出しましたので、紹介します。

2017年5月23日

「いわゆる共謀罪」法案衆議院採決強行に抗議し、採決の撤回を求める

日本医療福祉生活協同組合連合会
代表理事会長理事 藤原 高明

「いわゆる共謀罪」の主旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案は、19日の衆議院法務委員会に続き、23日の衆議院本会議でも採決の強行が行われ、与党と日本維新の会の賛成によって可決し、参議院に送られることになりました。医療福祉生協連は、数の力によるこの強引な国会運営に抗議し、採決の撤回を求めるものです。

そもそも、与党は、国際組織犯罪防止条約締結に不可欠な法案と主張していますが、野党側は共謀罪法案は必要ないとの立場をとっています。

政府は「オリンピック開催に不可欠」と主張して法案の成立を急いでいますが、なぜ、現在の法制ではテロ行為やその準備行為は取り締まることができないのか、国民の理解は置き去りにされたままです。

この法案の目的は、警察の捜査権を拡大して内心の自由を脅かし、監視の強化や国民どうしの密告を奨励することであり、国民が「物言えぬ」社会をつくることになることが懸念されます。

一般人の日常行動と犯罪者のテロ等準備罪の要件となる行動の境目は極めてあいまいなままです。捜査権の乱用を防止するための仕組みづくりなどの議論はほとんど行われていません。

衆議院での審議において、法案の問題点や矛盾が次々と指摘され、議論が尽くされたとは言えません。

衆議院での政府答弁内容やその態度を見る限り、このまま法案が参議院に送られても十分な審議が保障されるとは限りません。国会が立法の府・言論の府の役割を取り戻すためには、「いわゆる共謀罪」の衆議院本会議での採決を撤回するしかありません。

医療福祉生協連は、日本国憲法が保障する内心の自由、言論・表現の自由に抵触する、「いわゆる共謀罪」制定を目的とした組織的犯罪処罰法改正に改めて反対すると共に、採決強行に抗議し、採決の撤回を求めるものです。

以上

地方政治新聞「民主香川」に、「社会保障はどうなるか」というタイトルで、社会保障改悪の内容の連載をしています。2017年3月19日号(第1737号)に掲載した、「経済・財政再生計画」にみる患者利用者負担増(1)、の前半を再掲します。

2017年度予算案は2月27日の衆院本会議で、自民・公明両党などの賛成多数で可決し、参院に送付されました。憲法上の規定により予算は衆議院で議決されれば、参議院での議決がなくても参院送付後30日で自然成立するため、16年度内に成立することになりました。

医療・介護・年金など、高齢化に伴い社会保障費は年間約8000億円から1兆円増加します。この「自然増」を、2013年度は8400億円の厚労省の概算要求に対し5600億円と2800億円圧縮。14年度は9900億円の概算要求を5900億円に、4000億円圧縮。15年度は8300億円の概算要求を3600億円に、4700億円圧縮しました。

2016年度からは、厚労省の概算要求時点で圧縮が行われ、16年度は6700億円の概算要求を5000億円に、1700億円圧縮。17年度は6400億円の概算要求を5000億円に、1400億円圧縮しています。

2017年度の社会保障費自然増の1400億円削減の中味は、以下の通りです。

・高額薬剤の薬価引き下げ 200億円
・協会けんぽの補助金の減額 320億円
・70歳以上の高額療養費の上限額の引き上げ 220億円(*)
・後期高齢者の保険料の「軽減特例」の縮小・廃止 190億円(*)
・65歳以上の療養病床の居住費(光熱水費)の引き上げ 20億円(*)
・高額介護サービス費の上限額引き上げ 10億円(*)
・介護納付金の総報酬制割の導入 320億円

これらを合わせると1400億円になりますが、患者・利用者の直接負担は、(*)印をした4つの内容で合わせて440億円で、延べ1500万人が対象となります。17年度の当初予算は約97.5兆円ですから、440億円は、わずか0.045%に過ぎません。高齢者が増えれば、医療・介護の費用が増えるのは当然のことですから、「自然増」の圧縮とは、憲法25条に定めた国の責任を放棄することにほかなりません。

(次回に続く)

5月7日、さいたま市内で、医師として被曝者の支援と核廃絶の運動において尽力し多大な功績を残した、肥田舜太郎(ひだ・しゅんたろう)先生を偲ぶ会が、開催され約450名が参列しました。

医療福祉生協連は、日本原水爆被害者団体協議会をはじめとする6団体で構成される実行委員会の構成員として参加し、私は代表理事会長理事として、お別れの言葉を、述べました。以下、大要を紹介します。

私は、医師として、先生の活動に心から敬意を払うとともに、先生の活動を引き継ぎ、後世に伝えていかなければならないと思います。

原爆投下により、その時に広島・長崎にいた方だけでなく、新型爆弾が投下され、甚大な被害が出ているという情報により、多くの方が被災者救援のため被爆地に入り、入市被曝を受けました。また、家族や親戚などの捜索で入って方たちもいます。核兵器がどのような被害をもたらすか、私たちはこれからも核兵器の使用はもちろん、核兵器を持つことも絶対に許さないという声を上げ続けなければなりません。

いま、国連では、核兵器禁止条約の締結に向けた交渉が進んでいます。核兵器に「悪の烙印」を押し、核兵器の使用、開発、保有、輸送を、幅広く禁じる条約を速やかに成立させ、肥田先生の思いを実現する取り組みを進めていきたいと思います。

私も、一人の医師として、被爆者医療に携わるものとして、肥田先生の活動に学びながら、歩んでゆきたいと思います。

香川県保険医協会報2017年4月号の「主張」欄に、「17予算に見る社会保障改悪」というタイトルで、社会保障改悪の現状を報告しました。その内容を再掲します。一部修正しています。

高齢化に伴い、社会保障費は年間8千億円から1兆円増加します。この「自然増」を、政府は13年度から毎年5千億円程度に圧縮してきました。

17年度は、厚労省の概算要求時点で6400億円に圧縮、予算案では5000億円に圧縮しています。

まず、70歳以上の高額療養費の上限額の引き上げで、220億円の社会保障費の削減になります。

2017年8月から「現役並み所得者(年収370万円以上)」について、69歳以下に合わせて外来医療費の月額負担上限が1万3200円引き上げられ5万7600円になります。住民税課税で年収370万円未満の場合は、外来医療費の月額負担上限が2000円引き上げられ、1万4000円になります。同様に、外来医療費と入院医療費を合算した負担上限も引き上げられ、これらを合わせると、1400万人に影響が及びます。

後期高齢者の保険料の「軽減特例」の縮小・廃止で、190億円の削減です。

後期高齢者保険の保険料は、制度発足前には被扶養者であった方や所得が低い方への軽減措置がありますが、これを「見直す」ものです。年金額が年153万円から211万円の方の場合、所得割部分が5割軽減から2割軽減になります。制度開始前に扶養家族だった方への定額割の9割軽減は7割軽減になります。

年金生活者の家計調査は赤字で、公的年金も削減されますから、とても「公平化」とは言えない、高齢者に負担を押し付けるものになっています。

65歳以上の医療療養病床の居住費(光熱水費)の引き上げで、20億円の削減になります。

居住費は1日320円の負担から370円に引き上げられ、1食460円の食費と合わせると月5万2500円になります。

介護保険の高額サービス費の上限額の引き上げによる削減10億円を加えると、患者・利用者の直接負担は、440億円になります。17年度の当初予算は約97.5兆円ですから、440億円は、わずか0.045%に過ぎません。

高齢者が増えれば、医療・介護の費用が増えるのは当然のことですから、こういった「自然増」の圧縮は、憲法25条に定めた国の責任を放棄することにほかなりません。速やかな撤回を求めるものです。

今年は、日本国憲法が施行されてから70年になる節目の時です。日本国憲法第99条で「……国務大臣、国会議員……は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」とされているにも関わらず、安倍総理は憲法改正を声高に叫んでいます。

平和安全法制を発動し、平時における自衛隊の米軍防護、法的手続きを無視した辺野古の新基地建設の強行など、憲法を無視した政治が行われる中での憲法記念日です。

私は、医療福祉生協連・代表理事会長理事として、「日本国憲法施行70年、沖縄の本土復帰45年に寄せて」という談話を出しました。別項に掲載しています。

5月3日には、9条の会・坂出主催の、―私たちの遺言「戦争体験を語る」 憲法施行70周年 出版記念集会 ―が開催され、約60人が参加しました。私は、「医療と憲法」と題した講演を行いました。

世界の高齢化や日本の高齢化の現状に触れた後、疾病の自己責任論と医療福祉生協が主張する健康の自己主権について述べました。憲法25条と日本の社会保障について触れ、世界の中で社会保障がどう扱われているかを述べ、最後に、「健康をつくる。平和をつくる。いのち輝く社会をつくる。」という医療福祉生協の理念を紹介し、憲法に基づく活動の重要性を強調しました。

2017年5月3日

日本医療福祉生活協同組合連合会
代表理事会長理事 藤原 高明

北朝鮮の軍事挑発行動に対して「全ての選択肢がテーブルにある」とする米トランプ政権は、空母打撃群を韓国沖に展開し一触即発も指摘される状況をつくっています。政府は自衛隊に対して、米空母打撃群との共同訓練を行わせ、安全保障関連法にもとづく平時の米軍艦船護衛を命じました。こうした日本の平和と安全に関わる緊迫した情勢が続く中で、日本国憲法は施行70年を迎えます。

70年前、第二次世界大戦によって焦土と化したこの国の人びとにとって、日本国憲法は大きな希望でした。憲法9条の「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」するという宣言は、世界とアジアに大きな被害をもたらした自らの行動への反省であり、「この憲法のもとで平和と人権の国を建設する」という、世界の人びとに向けた決意のメッセージでもありました。

その日本国憲法の平和や人権を享受できないまま、戦後27年間にわたって米軍の占領下におかれた沖縄は、この5月15日に本土復帰45年を迎えます。県民の4人に一人が犠牲になったといわれる沖縄戦が終わり、生き残った県民を待っていたのは米軍の苛酷な支配でした。憲法9条を持つ日本への復帰を願い、島ぐるみの大闘争を経て1972年5月15日に施政権が返還されましたが、県民の願いに反して米軍基地は残され、奪われた土地は戻りませんでした。そして今日、政府は期限切れとなった岩礁破砕許可を更新する法的手続きを無視して辺野古新基地建設を強行し、沖縄の人びとに新たな苦しみと分裂をもたらしています。基地負担を押し付けられ、米兵による犯罪で人権を踏みにじられる事件が続く沖縄には、復帰後45年を経てもなお日本国憲法は活かされていません。

施行70年を迎え、憲法改正に向けた議論が始まっていますが、その賛否をめぐる世論は拮抗しています。憲法9条をめぐっても意見は分かれ、「9条改正賛成」も一定の割合を占めています。北朝鮮や中国の行動によって日本周辺の緊張が高まる中であっても、日本国憲法の原則とそのもとで日本がとるべき行動を忘れ、沖縄の現実に目をつぶるようなことがあってはなりません。

「健康をつくる。平和をつくる。いのち輝く社会をつくる。」という医療福祉生協の理念には、多くの先輩たちが事業や活動を通して実現しようとした願いが込められています。それは、情勢や環境がいかに変わろうとも守り抜かなくてはならない、平和・人権や民主主義など日本国憲法の原則に重なるものです。

私は、医療福祉生協の理念を具体化することは、日本国憲法を守り活かすことであることを確信します。そして復帰45年を迎えた沖縄が米軍基地の負担によってこれ以上蹂躙されることの無いよう、全国の会員生協と連帯したとりくみをすすめることを改めて決意するものです。

以上