毎週火曜日・金曜日更新予定。理事長ブログ

Monthly Archives: 10月 2016

第837回(10月25日付)の「ニボルマブ」という抗がん剤の薬価についての続きです。

この薬剤は「根治切除不能な悪性黒色腫」に対しては「1 回2 mg/kg(体重)を3 週間間隔で点滴静注」する、というものでしたが、2015年12月に「非小細胞肺がん」に適応が広がった時に、「根治切除不能な悪性黒色腫」に対しても「1 回3mg/kg(体重)を2 週間間隔で点滴静注」が可能となりました。

要するに投与量を増やして(2mg/kgから3mg/kg)、投与回数も3週間隔から2週間隔に増やしたことになります。体重が60kgの場合、6週間で120mg×2回から、180mg×3回投与することになり、使用量は2倍以上になります。

対象患者は470人から数万人なった訳です、こちらは100倍になったといえます。高すぎる薬価の是正は急務だといえます。

薬剤の定価、薬価を算定するときには、似たような効果を持つ薬剤の薬価を参考にする「類似薬効方式」で決められますが、似たような薬剤がない場合は、メーカーの主張が大きく反映される仕組みになっています。

特別に有用性が高いと判断される場合には「有用性加算」として、5%が加算されますが、今回はなぜか10%が加算されています。また、「営業利益率加算」として60%が加算されていますが、これもその理由は明らかではありません。

高すぎる薬価の是正とともに、薬価算定の審議について公開することが求められます。

第820回(8月19日付)で「ニボルマブ」という抗がん剤の薬価について触れました。

この薬剤は、「根治切除不能な悪性黒色腫(3週に1回)」に投与する薬剤で、対象患者を470人として申請があり、2014年9月に100mg/10mlで729,849円の薬価が設定されました。

問題の1番目は薬価の算定経過が不透明だということです。薬価は厚労省の薬価算定組織が算定し中医協(中央社会保険医療協議会)で決定されますが、「算定組織」の会議は非公開で議事録もないことが、6日の参院予算委員会の小池参院議員(共産)の質疑で明らかになりました。「製造原価も研究開発費も企業の言い値のうえ、60%の利益率加算まで」認められています。

さらに、2015年12月に「非小細胞肺がん(2週に1回)」に適応が追加され、対象患者は数万に増えたものの薬価は据え置きとなり、問題になりました。

この薬剤は海外でも販売されていますが、諸外国と比較しても異常に高いという問題もあります。保団連(全国保険医団体連合会)が9月6日に記者会見で明らかにしたところでは、英国が150,234円(日本の6分の1)、米国が297,832円(日本の2.5分の1)です。

異常な高薬価の薬剤算定のあり方にメスを入れなければ、保険財政は破綻してしまいます。高価薬剤の薬価算定に対する、新たな仕組みを作るべきです。

前回の続きで「社会保障はどうなるか(9) 診療報酬改定に見るこれからの医療(5)」の後半です。

(承前)

今回から「小児かかりつけ診療料」が新設されました。条件は少し複雑で、①当該医療機関を、予防接種や検診を含め4回以上受診している未就学児、②3歳以上の患者は3歳未満から小児かかりつけ診療料を算定している、③いったん、小児かかりつけ診療料を算定しなくなったら再度の算定はできない、というものです。何らかの事情で転医した場合を除き、1か所しか算定できない、つまり「主治医」制になるということです。

それでは、医療機関として何が求められるのでしょうか。①急性疾患などの対応の指導やアトピー性皮膚炎などのよくみられる慢性疾患に対する指導や診療、②患者が受診しているすべての医療機関の把握と専門医への紹介、③検診の受診状況や結果を把握し発達相談や健康相談に応じる、④予防接種歴の把握とスケジュール管理の助言、⑤電話相談を常時対応する、です。

①は当然の対応として、②から④は親とスタッフの協力があれば可能ですが、問題は⑤の「常時」対応という文言です。常時というのは24時間365日ということですから、この対応が大変で、現実的に可能かという声があります。

さらに、「同意書」が必要で、以下のような内容です。「小児かかりつけ診療料」について説明を受け、理解した上で、▲▲医院 医師 ○○○○を主治医として、病気の際の診療、継続的な医学管理、予防接種や健康に関する相談・指導等を受けることに同意いたします」。読みようによっては、他の病院にはかかりませんという宣言のようにも受け取れますから、脅しのように感じる方もいるかもしれません。

24時間対応については、連携医療機関とともに対応するということなのですが、都市部ではともかく、地方で小児科医の少ないところでは医師に対する負担が大きすぎるのではないかという声があります。どこまで広がるかは注視する必要があります。

因みに、2016年6月1日現在で、地域包括診療料の届出を行っている医療機関は186、小児かかりつけ診療料の届出は848です(いずれも全国の数値)。認知症地域包括診療料は、届出不要なので数はわかりませんが、地域包括診療料の届出が必須ですから、0から186の間ということになります。

地方政治新聞「民主香川」に、「社会保障はどうなるか」というタイトルで、社会保障改悪の内容の連載をしています。2016年9月18日号(第1719号)に掲載した「社会保障はどうなるか(9) 診療報酬改定に見るこれからの医療(5)」の前半部です

第825回(9月6日付)で、高齢者や認知症患者対応の「地域包括診療料」「認知症地域包括診療料」について触れました。「地域包括診療料」を算定する際に「慢性疾患の指導に係る適切な研修を修了した医師」、という要件が定められました。具体的には「日本医師会生涯教育制度に係る研修について、2年間で通算20時間以上の研修を受講すること。また、20時間の講習の中には、カリキュラムコードとして 29認知能の障害、74高血圧症、75脂質異常症、76糖尿病を含んでおり、それぞれ1時間以上の研修を受講」しなければならないとされました。

「日本医師会生涯教育制度」とは、いったん医師免許証を取得すると生涯にわたって更新が不要のため、医師会として生涯にわたって自己研修を行う仕組みを作ったものです。連続した3年間の単位数(30分で0.5単位)と、医師会の定めたカリキュラムコード数(84種類あり、同一コードは加算不可)の合計数が60以上の者に「日医生涯教育認定証」を発行する仕組みです。

「地域包括診療料」は、医師会の定めたカリキュラムに基づいた研修制度を受けて初めて算定できる点数、ということになります。

「地域包括診療料」「認知症地域包括診療料」は、いずれも、「定額制」「主治医制」導入の側面を持ちますが、小児分野でも同様の仕組みが始まりました。

(次回に続く)

10月8日に東京都内で、第1回日本HPHカンファレンスが開催されました。

日本HPHネットワークは、英語表記がJapan Network of Health Promoting Hospitals & Health Servicesで、J-HPHと略します。WHOが1989年から提唱した活動で、日本では、昨年10月に結成され、医療福祉生協連の会長として私も発起人となりました。

今回は第1回の会合ということで、顧問として、開会あいさつを行いました。以下、大要です。

昨日HPHネットワークのホームページを見ましたら、53事業所が加盟していて、医療生協は23でした。私たちの組織は、病院・診療所合わせて400くらいありますからその数%で、これから頑張らないといけないと思いました。

開会前の会場です

開会前の会場です

私たちは医療事業、介護事業だけでなく、健康づくりやまちづくりの活動もやっています。全国で300万人の組合員がいろいろな活動をしていますが、今力を入れているのが健康チャレンジで、2ヶ月くらいの期間、お酒を減らそう、運動しようと、自分の決めた目標で頑張る取り組みをやっています。10万人規模でまだまだ少ないのですが。

行政や学校にこの話を持っていくと、非常に喜ばれます。健康を考えるとき、自分で自分の健康を見つめる、自分で決めるということ、これが健康を守るという点で大事なことだという共通認識があるのかと思います。

医療従事者が、地域の人と一緒になって健康づくりの活動をやるということが、今求められていることではないかと思います。こういった活動が全国で、さまざまな病院、診療所の職員が地域の人と一緒に活動することが大事な時だと思います。

私たちは「地域まるごと健康づくり」という言葉で活動していますが、一人一人の人間が健康であるだけでなく、その地域が健康であることが、大事なことです。

HPHの活動を医療生協の中でも大きく広げていき、周囲の医療機関とも一緒になって、活動していきたいと思います。

8月26日付本欄で(第822回)、2018年介護保険制度見直しについて、「福祉用具の貸与や住宅改修を保険対象から外すことも検討されています」と述べました。

福祉用具レンタルの対象となるのは、車いす、特殊寝台、床ずれ防止用具、などのほか、「手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえ」など13品目があります。2006年度の介護保険制度の改定で、要介護1、要支援1・2が利用できるのは、前記のうち、カギかっこに入れた4品目に限られることになりました。

今回検討されているのは、13品目すべてが利用できる要介護2の方が、保険を利用できなくなる、要介護1と要支援1・2の方はもともと保険での利用が制限されているのが、まったく利用できなくなることになります。

自己負担というのは、自分で買い取るということです。サイズが合わなくなるなどの理由で買い替える必要が出てきた場合、経済的な理由から、不具合があっても我慢する、という事態にもなりかねません、

「市民・国民の視点で、福祉用具供給システムについて立場を超えて議論する会議体として」2006年3月に発足した、「福祉用具国民会議」が、「福祉用具を活用し高齢社会における自立促進実現を求める署名」を行っていますが、すでに22万人を超えたと報道されました。

また、自己負担化に反対する意見書は24の都道府県議会と143の市町村議会で採択されています。同国民会議は、「高齢になっても、病気や障害を持ってもなお、希望を持っていきいきと『普通の暮らし』を営むために必要不可欠な社会資源」であると指摘していますが、その通りだと思います。

今回の福祉用具自己負担化に反対の声をあげたいと思います。

香川県保険医協会の会報の2016年9月号の「主張」欄に掲載した文章を紹介します。一部修正しています。

参院選が終わり、政府は、社会保障費の自然増分を3年間で1兆5000億円に抑え込むために、負担増・給付抑制を目的とする検討を始めました。

まず、「世代間の公平」の名のもとに、負担を引き上げようとしています。2年前の改悪で、70歳から74歳は2割負担に引き上げている最中ですが、75歳以上の窓口負担を2割に引き上げようとしています。また、70歳以上の医療保険の自己負担の限度額の引き上げも検討されています。

後期高齢者医療保険料の「特例軽減」が廃止されると、低所得者の保険料は2倍~10倍に急増します。介護保険の利用料も1割から2割に上げる計画です。

しかし、高齢化に伴い病気の種類は増えますから医療費が増加する一方、年金など収入は減少します。受診抑制を招き、疾病の重症化でかえって医療費は増える可能性があります。

療養病床で導入されている入院時の居住費(光熱水費)を一般病床にも拡大、かかりつけ医以外を受診した場合の定額負担、なども検討されています。

介護保険では、要支援1・2の介護保険外しに続いて、要介護1・2の生活援助を介護保険制度のサービスから外すというものです。生活援助とは、調理、洗濯、掃除等のことで、そもそも調理や洗濯などが自分でできないから「要介護」になっているのですから、介護保険制度の趣旨に反します。

福祉用具の貸与や住宅改修を保険対象から外すことも検討されています。具体的には、車いす・特殊寝台・床ずれ防止用具・手すり・スロープ・歩行器などです。

自己負担割合が2割になる人の対象を拡大、高額介護サービス費の上限額の引き上げなども検討されています。

保団連では、負担増計画の具体化を食い止めるため、参院選前から続けてきた「ストップ!患者負担増」署名に引き続き取り組みます。国会回次が変われば同趣旨の請願を再度提出できるため、これまで署名をしてもらった患者さんに、再度署名を訴えることが可能です。この秋は社会保障改悪を阻止する運動に力をいれましょう。